REITは少額から不動産投資ができて安定した分配金がもらえる金融商品
REIT(リート)とは不動産投資信託のことです。
投資家から集めた資金を使って、不動産を購入し、賃料や売却益を得て、その利益を分配金として投資家に分配する仕組みです。小額から投資が可能で、手軽に不動産投資が始められます。
REITのメリットは、少額から不動産投資ができること、複数の物件に分散投資できること、流動性が高く、証券取引所で簡単に売買できることです。また、安定した分配金が期待できる点も魅力です。
目次
REITとは?
REIT(リート)は「Real Estate Investment Trust」の略で、日本語では「不動産投資信託」と呼ばれます。多くの投資家から集めたお金を使って不動産を運用し、その利益を分配する仕組みです。
REITは、大型のオフィスビル、商業施設、マンション、物流施設などの不動産に投資します。
不動産を直接購入するよりも少額から始められるため、不動産投資に興味がある初心者にとってハードルが低いのが特徴です。
また、家賃収入や物件の売却益が主な収益源で、その利益は投資家に分配されます。株式と同じように証券取引所で売買でき、流動性が高いのもメリットです。
- REITは証券取引所に上場している
- REITには「投資法人」という名称が付く
- REITには3種類の投資方法がある
- REITには「特化型」「複合型」「総合型」がある
- REITの不動産用途は6種類ある
REITは証券取引所に上場している
REIT個別銘柄は、57銘柄が上場しており、REIT全銘柄を対象とした「東証REIT指数」が算出されています。(2024年12月現在)
東証REIT指数はREIT全体の動きを表す指数で、株式のTOPIX(東証株価指数)に相当する指数です。
REITには「投資法人」という名称が付く
上場しているREITの個別銘柄名は、「星野リゾート・リート投資法人」など「投資法人」という名称がつく特徴があります。
投資法人とは、不動産を取得し、運営することを目的とした法人です。
REITは株式に近い仕組みですが、使われる用語に少し違いがあります。
売買単位は「1口」「2口」と数え、株式の配当金にあたる利益は「分配金」と呼びます。
REIT保有者には株式と同じく、出資者の総会(投資主総会)への出席権利や、銘柄により投資主優待(保有施設の割引など)があります。
項目 | REIT | 株式 |
---|---|---|
投資対象 | 投資法人 | 株式会社 |
単位の呼び方 | 1口 | 1株 |
売買単位 | 1口 | 100株 |
価格 | 投資口価格 | 株価 |
出資者 | 投資主 | 株主 |
還元される利益 | 分配金 | 配当金 |
REITには3種類の投資方法がある
REITには3種類の投資方法があります。
- REIT個別銘柄に直接投資する
- REITのETF(上場投資信託)へ間接的に投資
- REITを対象とした投資信託へ間接的に投資
REITに投資する方法は、個別銘柄に直接投資する方法と、REITのETF(上場投資信託)や、REITを対象とした投資信託を購入することで間接的にREITに投資する方法があります。
直接投資 | 間接投資 | ||
金融商品 | REIT 個別銘柄 |
REIT ETF |
REIT 投資信託 |
---|---|---|---|
上場 | 〇 | 〇 | × |
購入方法 | 証券会社 | 証券会社 | 証券会社・銀行などの金融機関 |
最低必要投資額 | 5万円ほど~ | 数千円~ | 数百円~ |
価格変動 | 常に変動あり | 常に変動あり | 1日1回算出 |
手数料 | 売買手数料(証券会社により異なる) | 売買手数料+信託報酬 | 売買手数料+信託報酬 |
REITの投資法人が保有する特定の不動産物件に投資したい場合はREIT個別銘柄に投資し、複数のREITに分散投資したいのであれば、ETFか投資信託を購入することで効率的に投資ができます。
REITには「特化型」「複合型」「総合型」がある
REITは大きく分けると次の3タイプになります。
- 1つの不動産用途だけを投資対象にした「特化型」
- 2種類の用途に投資する「複合型」
- 3種類以上の異なる用途に投資する銘柄を「総合型」
「オフィス特化型」の銘柄は、オフィスビルのみに投資するREIT銘柄となります。(8951 日本ビルファンド投資法人など)
ホテルのみに投資する「ホテル特化型」(8985 ジャパン・ホテル・リート投資法人など)
- 「レジデンス(住宅)特化型」(3269 アドバンス・レジデンス投資法人など)
- 「商業施設特化型」(3292 イオンリート投資法人など)
- 「物流施設特化型」(3481 三菱地所物流リート投資法人など)
- 「ヘルスケア施設特化型」(3455 ヘルスケア&メディカル投資法人)
「複合型」は、オフィスと商業施設、住宅と物流施設など、2つの用途の物件を組み合わせて運用する銘柄です。(8986 大和証券リビング投資法人など)
「総合型」は、不動産用途を限定せず、オフィス+住宅+物流施設など3種類以上の用途に分散投資する銘柄となります。(3462 野村不動産マスターファンド投資法人 など)
「複合型」と「総合型」は、異なる用途の不動産に分散投資することで、特定の不動産市況に影響を受けにくくなり、リスクを軽減できる点がメリットです。その一方で「特化型」に比べると収益率は低くなります。
REITの不動産用途は6種類ある
REITには、投資対象の不動産によってさまざまな種類があります。
大きく分けると、以下の6つのカテゴリがあります。

不動産用途 | 内容 |
---|---|
オフィスビル | 都市部にあるオフィスビルへの投資が中心。 景気や働き方の変化に影響を受けやすく、空室リスクも高まることがあります |
商業施設 | ショッピングモールなどへの投資。 消費の動向や景気に左右されるため、個人消費の低迷時にはリスクが高くなります |
住宅(レジデンス) | マンションや賃貸住宅への投資。 比較的安定した収益が見込め、景気に左右されにくいのが特徴です |
物流施設 | 倉庫や配送センターへの投資。 長期契約が多く、安定した収入が期待できますが、次のテナントが見つからない場合のリスクもあります |
ホテル | ビジネスホテルやリゾートホテルへの投資。 景気や観光客の増減に大きく影響されるため、収益の変動が激しいことがあります |
ヘルスケア施設 | 高齢者向け住宅や介護施設への投資。 安定した収益が期待されますが、法制度や規制の変更による影響を受ける可能性があります |
それぞれ異なるリスクとリターンを持っており、投資家はこれらの特性を理解した上で、自分に合ったREIT銘柄を選ぶことができます。
REIT投資のメリット
REITには、現物不動産投資や他の投資商品と比較して多くのメリットがあります。
- 少額から投資可能
- 流動性が高い
- 高い分配金が得られる
- 管理の手間がない
少額から投資可能
REITの大きな魅力は、少額から不動産投資に参加できることです。
通常、不動産を購入するには数百万円から数千万円の資金が必要ですが、REITでは数万円単位から投資を始めることができます。
これは、複数の投資家が資金を出し合って大規模な不動産を共同で保有するためです。
この仕組みにより、個人投資家でも大規模なオフィスビルやショッピングモールといった物件に投資するチャンスを得られます。
流動性が高い
現物不動産投資では、物件を売却するのに時間がかかることが多いです。
買い手を見つけるのに数カ月以上かかることもあり、急な現金化が難しいというデメリットがあります。
しかし、REITは証券取引所に上場しているため証券口座があれば、株式と同じように市場で売買することができます。
これにより、必要なときにすぐに売却して現金化できるため、投資家にとっては非常に便利です。
高い分配金が得られる
REITは、不動産運用によって得られた収益の90%以上を投資家に分配金として還元することが義務付けられています。
これにより、投資家は定期的に安定した収益を得ることが可能です。通常、REITの分配金利回りは3%~6%程度で、現金預金や国債などの利回りと比べると、非常に高いリターンを期待できます。
2024年12月現在の日経平均採用銘柄の平均配当利回りは約2%で推移しているため、株の配当よりも高いことが分かります。
また、REITは株式と同じようにキャピタルゲイン(値上がり益)を得ることもできるため、分配金と値上がり益の両方を狙うことができるのが魅力です。
管理の手間がない
現物不動産では、物件の管理やメンテナンス、入居者募集、退去時の対応など、物件の維持管理に手間がかかります。
しかし、REITでは、投資法人や運用会社が不動産の管理をすべて行ってくれるため、投資家は物件の管理をする必要がありません。
これにより、不動産管理の手間や時間を省けるため、初心者や忙しい投資家にとって非常に大きなメリットとなります。
株式投資では株主優待がある銘柄があり人気を集めています。
REIT個別銘柄も、株式同様の仕組みで「投資主優待」を実施する銘柄もあります。

※REITの投資信託・ETFには投資主優待はありません。
REIT投資のデメリット
REITには多くのメリットがある一方で、いくつかのリスクも伴います。
これらのリスクを理解し、対策を立てておくことが重要です。
- 市場リスク
- 金利リスク
- 不動産価値の変動リスク
- 信用リスク
市場リスク
REITは、株式と同様に市場の動向に左右されやすい商品です。
REIT自体は不動産を保有しているため、基本的には不動産市場の動向に連動しますが、株式市場に上場しているため、経済全体の影響を受けやすいです。
特に、不況期や金融市場の混乱時には、REITの価格が大幅に下落することがあります。
例えば、リーマンショックやコロナショックの際には、REIT市場も大きな打撃を受けました。
金利リスク
REITは、不動産を取得する際に多くの場合借入(ローン)を利用します。そのため、金利が上昇すると借入コストが増加し、REITの収益性が低下する可能性があります。
さらに、金利上昇に伴い、REITの分配金利回りが相対的に低く見えるようになるため、投資家の売りが集中し、価格が下がることもあります。
特に、金利上昇局面では、このリスクに注意が必要です。
不動産価値の変動リスク
REITは、不動産を基にした投資商品であるため、不動産の価値が下がった場合、REITの価値も下がることがあります。
例えば、景気が悪化してオフィスの需要が減少したり、商業施設が閉鎖されたりすると、その物件の価値は大幅に低下します。
また、地域や経済の状況によっては、物件の売却が思うように進まないこともあり、これがREITの分配金に影響を与える可能性があります。
信用リスク
REITを運用している投資法人や管理会社の経営状態が悪化した場合、REITの運用に支障が生じる可能性があります。
これにより、分配金が減少したり、REIT自体の価格が下がることがあります。運用会社が健全であるかどうかを見極めることも、REIT投資では重要なポイントです。
REITは証券会社で買える
REITへの投資は、証券会社を通じて行うため、証券口座を開設する必要があります。
すでに株式投資などの証券口座を持っている方は、その口座を使うことができます。
証券口座を開設する際には、まずはネット証券か店舗型の証券会社にするかを決めます。
店舗型証券には担当者が付くなどの特徴がありますが、手数料や利便性を考えればネット証券を使うことをおすすめします。
主要ネット証券では、REIT個別銘柄は全銘柄取引可能で、J-REITを投資対象とした投資信託も50以上のファンドから選ぶことが可能です。
取引手数料やツールの使いやすさで、自分に合った証券会社を選び、REITへの投資を始めることができます。
REITを選ぶ時のポイント
REITを選ぶ際には、いくつかの重要な要素を確認する必要があります。
初心者でも理解しやすいREIT選びのポイントです。
- 投資対象不動産を確認
- 分配金利回りを比較
- 分散投資を心掛ける
- 運用会社や投資法人の実績を見る
投資対象不動産を確認
まず、REITが投資している不動産の種類や立地を確認しましょう。
オフィスビル、商業施設、住宅、物流施設など、どの種類の不動産に投資しているかによって、リスクとリターンのバランスが異なります。
また、地域の経済状況や成長性も考慮すべきポイントです。
例えば、都心部のオフィスビルは安定した収益が期待できる一方、地方の不動産は空室リスクが高い場合があります。
分配金利回りを比較
REITの魅力の一つである分配金利回りは、投資の重要な要素です。
分配金利回りが高いほど、定期的な収益が多くなるため、利回りの高いREITを選ぶことが基本となります。
ただし、利回りが高いからといってリスクが低いとは限らず、あまりに高い利回りを謳うREITにはリスクが潜んでいることもあるため、注意が必要です。
分散投資を心掛ける
REITは、複数の不動産に分散して投資するため、リスク分散が可能です。
しかし、一つのREITに集中して投資するのではなく、複数のREITを組み合わせることで、さらにリスクを分散させることができます。
例えば、オフィス系REITと住宅系REITを組み合わせることで、景気の変動に対するリスクを抑えることができます。
運用会社や投資法人の実績を見る
REITは、不動産の運用や管理を専門の投資法人や運用会社が行います。
これらの運用会社の実績や信頼性を確認することが重要です。
特に、過去の分配金の支払い状況や、どのような投資方針を取っているかを確認することで、そのREITの信頼性を判断できます。
REITは長期目線で行う投資
REITは、長期的な運用に向いている投資商品です。
分配金を再投資することにより、時間とともに複利効果を享受できます。
また、長期的に保有することで市場の短期的な変動に左右されにくくなり、安定した収益を得られる可能性が高まります。
特に、安定した分配金を狙う場合、住宅系や物流施設系REITが人気です。
市場の状況に応じて、ポートフォリオを柔軟に調整することも、REIT運用のポイントです。
例えば、景気が悪化した場合は、景気敏感なオフィスビルや商業施設系のREITを減らし、安定収入が期待できる住宅系や物流施設系REITを増やすといった戦略が有効です。
不況時や金利上昇時にはREIT価格が割安になることが多いため、逆に買い増しのタイミングとして活用することも考えられます。
景気が回復した際には、投資口価格の上昇と分配金の両方で収益を得られる可能性があります。
REITの基本事項と特徴を動画でも説明しています。
国内REIT(J-REIT)と海外REITの違い

REITには、日本国内の不動産に投資する国内REIT(J-REIT)と、海外の不動産に投資する海外REITの2つのタイプがあります。
これらには、いくつかの重要な違いがあります。
J-REITは、日本国内の不動産を投資対象とし、主に賃貸収入を得るための物件に投資します。
基本的には、既存の物件を運用して収益を上げる形態が一般的で、比較的安定した収益が期待されます。
一方で、海外REITは、海外の不動産を投資対象としますが、海外REITの中には、不動産開発プロジェクトにも投資するものがあります。
不動産開発プロジェクトは、開発が成功すれば大きな利益を見込めますが、多くの企業や事業者が関与するため、プロジェクト進行の遅れや、最悪の場合は破綻するリスクもあります。
特に、開発途中のリスクは高く、景気や資金調達状況によっては計画通りに進まないことも少なくありません。
不動産開発を行う海外REITは、成功すれば高いリターンが期待できますが、もし失敗すれば資産価値が大幅に下がるリスクもあるため、慎重な判断が必要です。
安定した運用を目指している方は、海外REITへ投資するよりもJ-REITに投資することが安全性が高まります
REITに関する質問
REITに関するよくある質問です。
REITのリスクは何ですか?
REITのリスクには、不動産市場の変動リスク、金利上昇リスク、運営会社の経営リスクがあります。
不動産価値の下落や空室の増加などにより、分配金が減少する可能性があります。
また、金利上昇は借入コストを増加させるため、収益に影響します。
REITの分配金はどのように決まりますか?
REITの分配金は、投資法人が運用する不動産から得られる賃料収入や売却益を基に決まります。
投資法人は収益の90%以上を分配金として投資主に還元することが義務付けられています。
これにより安定した分配金が期待できます。
分配金はどのように受け取るのですか?
分配金は、保有するREITの投資口数に応じて受け取れます。
通常は、毎月や四半期ごとに分配金が支払われ、証券会社の口座に振り込まれます。
分配金の支払スケジュールや金額は、各REITの運用実績に依存します。
REITに投資する際の注意点は何ですか?
REITに投資する際は、投資対象となる不動産の種類や立地、運用実績、分配金の安定性などを確認することが重要です。
また、複数のREITに分散投資することでリスクを低減できます。購入時の手数料や税制についても理解しておきましょう。
REITの値動きは何に影響されますか?
REITの値動きは不動産市場の動向、金利の変動、経済環境、賃貸状況などに影響されます。
不動産の需要と供給のバランスや、投資法人の運営状況も重要な要因です。
REITと不動産クラウドファンディングの違いは何ですか?
REITは証券取引所に上場している不動産投資信託で、小口化された不動産に投資し、分配金を受け取ります。
一方、不動産クラウドファンディングはオンラインプラットフォームで資金を集め、特定の不動産プロジェクトに投資します。流動性や投資方法が異なります。
REITの初心者本を出版
ノウハウ本を数多く出版しているソーテック社より、トチクモ執筆担当のかつさんどが「世界一やさしい REITの教科書 1年生」を出版させて頂きました。

- 投資をしたことはないけど、投資に興味がある方
- 投資をまだ始めたばかりの初心者の方
- 資産を守りながら増やす投資がしたい方
- 株式投資との分散投資先を探している方
- 「分配金」という安定的な不労所得を得たいと思う方
少額から手軽に始めることができる不動産投資、「REIT」と「不動産クラウドファンディング」の仕組みや、投資するメリット・デメリットを丁寧に解説した一冊です。
運営者の投資実績
世界一やさしい REITの教科書 1年生を読んだカブスルもREITを購入しました。
保有しているのは著書で紹介されていたREITになります。
REIT | 基準価額 |
---|---|
【3269】アドバンス・レジデンス投資法人 | 306,575円 |
【3481】菱地所物流リート投資法人 | 401,775円 |
【8966】平和不動産リート投資法人 | 142,415円 |
これらは分散投資・分配金目的で長期保有をする予定です。