ソーシャルレンディングには構造上の問題点あり?過去の延滞例から考察
ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)は、新しい形態の投資手法として注目されていますが、過去に起こった複数のトラブル例から、いくつかの構造的なリスクが存在します。
もちろん安定した運用を続ける事業者も多く、すべてが危険というわけではありませんが、リスクを正確に理解し、投資することが重要です。
ソーシャルレンディングには次のようなリスクがあります。
目次
貸し倒れ・延滞リスク
ソーシャルレンディングでは、貸し手と借り手のマッチングを行い、個人や企業(主に中小企業)に融資が行われます。
貸し手は貸し倒れのリスクを抱えており、借り手が返済能力を失った場合に資金を回収できない可能性があります。
情報開示リスク
ソーシャルレンディングでは、貸し手は借り手の信用情報や経済状況を基に投資判断を行います。
しかし、借り手が正確な情報を提供しなかったり、貸し手が借り手の情報を正確に評価できなかったりすることがあります。
また不動産などの担保に関しても、正確な担保評価がされていないケースもありました。
事業者リスク
ソーシャルレンディングは、インターネット上で事業者を介して行われるため、そのプラットフォームの信頼性が重要です。
プラットフォームの運営会社が十分な審査やリスク管理、プロジェクトの進捗の監視を行っていない場合、投資家の利益や元本棄損などの問題が発生する可能性があります。
過去のソーシャルレンディング事業者、貸し倒れ・延滞
事業者 | 主な遅延案件 | 貸し倒れ・ 延滞総額※ |
金融庁 処分内容 |
---|---|---|---|
みんなのクレジット | 不動産ローンファンドなど | 31億円 | 2017年3月 業務停止命令 |
ラッキーバンク | 不動産ローンファンドなど | 33億円 | 2018年3月 業務改善命令 2019年3月 登録取消し |
マネオマーケット | 不動産ローンファンド、再生エネルギー関連ファンド | 350億円 | 2018年7月 業務改善命令 |
トラストレンディング | 公共事業を連想させる案件など | 52億円 | 2018年12月 業務停止命令 2019年3月 登録取消し |
SBIソーシャルレンディング | 再生エネルギー関連、不動産ローンファンドなど | 150億円 | 2021年6月 業務停止命令 |
※報道されている貸し倒れ・延滞総額
他には海外案件が多い「クラウドクレジット」、大阪ホテル案件が遅延している「オーナーズブック」、また最近では「バンカーズ」、ソーシャルレンディング募集額第1位の「クラウドバンク」でもバイオマス発電ファンドなどに遅延案件が発生しています。
再生エネルギー関連ファンドは危険!?
ソーシャルレンディングでの遅延案件の内容を見てみると、太陽光発電・バイオマス発電・風力発電など再生エネルギー関連施設を担保とした貸付ファンドが多いことがわかります。
再エネ関連事業の全てが悪いわけではありませんが、施設が建設前で発電が稼働していない状況だと、その土地の不動産価値は低く、貸付金額を大きく割り込む金額での返済になる場合もあります。
ファンド情報の担保価値は、今後稼働した場合の収益性を加味した評価額の場合もあり、建物が建設前で稼働していない状況で事業がストップした際には、想定した金額での売却は難しいケースもあります。
私は、過去に再エネ関連で期失を何件か経験しており、担保価値の算出が難しい再エネ関連ファンドは投資しないことにしています。
海外案件はハイリスク・ハイリターンが多い
ソーシャルレンディングには、海外の事業や企業へ貸し付ける案件もあります。
比較的利回りが高く、地域の分散になるメリットもありますが、利回りの分だけリスクは高くなります。
一番の懸念は、海外の貸付先に問題が起こり、支払い停止や債務不履行になった場合の回収作業が難しいことです。日本の案件でも回収作業は困難になる場合が多いため、それが遠く離れた海外だとより難しくなります。
現地のリアルタイムの情報収集もできないこともあり、またその国の常識や文化も違ってくるため、焦げ付いた資金の回収は困難になる場合が多くなります。
私は、国内の優良な不動産のみに投資する手法ですので、不明点が多い海外案件には投資しておりません。
複雑なスキームに注意!お金の流れは見えますか?
不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングの比較をした場合、一番の違いはお金の流れに関する仕組みの違いが挙げられます。
不動産クラウドファンディングでは、投資家と事業者(投資対象は事業者保有の不動産など)の間だけで契約で、お金の流れが単純で明らかです。
一方、ソーシャルレンディングは、投資家のお金は事業者を通じて、事業者が審査した貸付先に貸し付けられます。 事業者が健全でも、審査が甘い場合や貸付先に悪意があった場合、期失になったり元本が返還されなかったりするリスクがあります。
つまり、投資家が貸付先に存在する懸念点を見抜くことは簡単ではありません。
このような点から、私は透明性が低く、お金の流れが複雑なソーシャルレンディングよりも、スキームが単純で、上場系の事業者が運営する不動産クラウドファンディングのファンドに投資する方が、安全性が高いと考えます。
リスクを抑えた堅実な資産運用を実践するには、不動産クラウドファンディングが最適だと思います。